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俳句の森「蒼の会」

俳句の森「蒼の会」

2013年4月

こんにちは「蒼の会」主宰の根本佳代子です。

季節に四季があるように
恋にも四季があるのです 

季節が移ろいゆくように
恋も移ろいゆくのです    
根本佳代子

  
【春の逝く】
呼び出して つくり涙や 暮遅し
遠き日の 償はぬまま 春めぐり

【熱帯夜】
芍薬の 散るに迷ひの なかりけり      
泣く日あり 泣かぬ日のあり 走馬灯

ところてん 上目遣ひの 嘘ひとつ
約束の 席あいたまま 星祭り
つと眺む 剥かれあらはの 水蜜桃

送り火に 誰も無口に なつてをり
重き荷の やがて五色や 走馬灯

【秋迷路】
守れざる 約束をして 良夜かな  

秋深し 黒髪覚ゆ 昨夜(よべ)の指 

ひとり寝の 髪もてあまし 夜長かな
長き夜の 髪の重さを 如何にせむ

くちづけを 待ちくたびれて 温め酒

泣き顔で 逢瀬へ駆ける 秋夕焼

【冬きざす】   
ささやきに 肌染められし 寒夜かな

あきらめの 紅まだ褪せぬ 冬薔薇

【夏の果】
会へぬ日の 手もち無沙汰や 更衣(ころもがえ)            
去る人の 言葉かき消し たたら神

香水の 新しくせむ 別れ際
白扇子 別れ話に 手の止まり

ほつれ髪 直す木陰や 初浴衣
償ひの ひと言ここに 遠花火
自らの 色貫かむ 緋の牡丹

【冬ざるる】
指先の 行く方じらされ 寒夜かな

口説くなら 次の熱燗 さめぬうち

【春の色】
湯ぶねより 三度呼ばるる 春の宿
桜宿 布団の距離を すこし詰め

春暁や 脱ぎしものみな ぬけ殻に
くちびるに ふれざる夜の 桜かな

春ゆくや 湯あがりの髪 乳房まで 
暮れの春 夜(よ)一夜(ひとよ)足の からめゐし


第22回「蒼の会」句会(2011年6月)

●根本佳代子 選

特選☆

ぱらぱらと 紙魚の住まいに 風をさす      秋 小兵衛

大切な本だろうか。のどかな晴れた日には欠かせない作業。
「風をさす」人の、書物への慈しみが伝わる。
そうしてまた閉じられた本の中でも、外でも、エピソードの続きがくりひろげられる
のだろう。
当たり前の日常が、こんなにも有り難いものだと思い知らされる。

準特選◎

うみねこの 黙して沖を 見てをりぬ        小滝流水

海の遥かを見ている人に言葉はない。うみねこも鳴くことはない。
悲しみさえ超越し、この瞬間に、希望を見いだす。さあ前へ。
静かな決意の前に言葉は要らない。

○ あの星は 幼(おさな)の母か 五月尽       村上美保子

時が過ぎ去ろうとも、子を想う母の愛は永遠である。作者の他を慮る深さが滲む。
季語をあまくしなかったのが、なお更じわりと胸に迫る一句。

○ 春時雨 波跡鉄柱 寄り添ひて           秋 小兵衛

堅牢な鉄柱がとり残されている。今となっては、寄り添う姿を春の雨が優しく包み込
む。
硬軟の対比が見事にいきる。

○ さみだれや 津波禍(か)流し 幕を引け      小滝流水

上五を平仮名にしたことで、視覚的な力みが緩和される。作者の心の叫びがこだます
る。
なんとも心強い、きっぱりとした自身への宣言なのだ。

   *

実際にお会いしなくても、俳句でその人の状況を垣間見ることができますね。
そして、そこに共感したり、新たな刺激を受けたり。
俳句は、発信した瞬間から自分だけのものではなくなる。
まさに実感です。

根本佳代子

「蒼の会」第18回句会・投句 ~

09/12月

みなさま、投句をありがとうございました。
下記要領で選句をお願いいたします。

*全句より5句選句し、その中で特選1句に☆、準特選1句に◎をつけてください。よろしければコメントもお書きください。結果発表の際、みなさま各自の選句+コメントを掲載させていただきます。選句の5句のみを「ねもとかよこ宛」メールで送りください。

*投句されていない方でも、選句希望の方は、お名前を明記の上お送りください。
*選句期日:12月3日(木)
*結果発表:12月4日(金)
*投句者:村上美保子、秋小兵衛、田中清一郎、宮本トシコ、小滝流水、小森さなえ、大場三輝、根本佳代子(8名)

      *

1 落ち着かぬ 心静める 落葉掻き(おちばかき)

2 蕾(つぼみ)さへ 孤高をまとふ 冬薔薇(ふゆそうび)

3 大根も 白菜も干し 冬支度   

4 小春日に 友呼び出し 花談義    

5 日月民(ひつくたみ) 満月(みつき)潮来で 芋を掘る 

6  はやり風邪 寝込む阿吾(あこ)らに ラムネ玉  

7  枯れ草や 兄が危篤と 姉の泣き

8 人恋し こころが冬に 染まるとも   

9 まだ生きる 希望をくれる 帰り咲き

10 寒椿 紅そのままに 落ちにけり

11 うすあかり 朝もや深く いそぎ足

12 村はずれ 一群の墓 しぐれけり

13 枯れもみじ 祖母を想いて 信濃路を

14 千枚に ならぬかぶらの 十枚漬け

15 寂然(しずかた)に 隠れたまうや 神楽舞

16 百目柿(ひゃくめがき) くれたお客の 味がする

17 ひたひたと 冬近くあり 星ひかる

18 枯菊と ともに文(ふみ)焼く 昼さがり
 
19 ふるさとの 袋小路は 雪ならむ

20 冬近し 襟かき寄せる 駅のホーム

21 命がけ 飛び出す大豆 いとおしく

22 ことたまの 神とたわむる 神無月

23 不況でも 笑顔をくれる 鰤(ぶり)の鍋

24 古暦 過ぎ行く日々に 後ずさり

25 ジャスミン茶 冷(さ)めて一人の 夜長かな

26 一枚の 布団をふやす 妻の腕

27 我もまた 宇宙の一滴(いってき)流星群

28 晩秋の バイオリンの音(ね) 過去ながし

29 神植えし もみじの大木 燃ゆる秋

30 とき重ね みかん色づき ときを待つ

31 亡き祖母の ぬくもり抱き着る ちゃんちゃんこ

32 神渡(かみわた)し 寂光浄土(じゃっこうじょうど)に 移り住み

33 振向けば もう何処(どこ)へやら 浮寝鳥(うきねどり)

34 冬薔薇(ふゆそうび)蜂の亡骸(むくろ)を抱きたり

35 こがらしに 指先の荒れ 始まりて

36 新米の 味をかみしめ 故郷(くに)想う

37 秋黄金 四季ある国の 豊かさよ

38 冬来たる 部屋のすみこに 灯をともす

39 ふるさとの 枯野に遊ぶ 御霊あり

「蒼の会」第18回句会・選句のまえに ~

09/12/4

みなさま

投句と選句をありがとうございました。
結果発表の前に、ぜひお伝えしたいことがあります。

みなさんも感じているかもしれませんが、この「蒼の会」のレベルが上がってませんか。
上がってますよね。みなさんからのコメントでもよくわかります。
投句して選句して、わ~~いってやってるだけなのに、一人だけではなく
確実に全体のレベルが上がってます。

技巧的に上手とか、出来上がってるとかいうのとは違う気がします。
言霊が入っている。これでしょうか。

実はこのひと月ほど、私はあることがきっかけで句が作れなくなっていました。
もう作りたくなくなっていました。
そんな中、みなさんからの句が届きます。

徹夜する日々の中で投句してくださる人、
移動の電車の中、
山積みの机の隅で、
農作業の合間の軍手のまま、
家族の危篤で故郷に向かう途中で、
体調が悪いなか起き上がっては書きとめる、
家業のあわただしさの中や
スケジュールいっぱいで
真夜中のわずかにできた時間に指おり数える・・・

みなさんからの投句は写真付きですね。それを見ているうちに、胸があつくなりました。
嬉しくて、楽しくて、幸せな気持ちになりました。
そしたら、句ができました。

なんだか、とりとめのないことを書いていますが、とにかく感謝なのです。
こうしてみなさんと俳句を共有できることがとてもありがたいのです。

俳句って、作り手から発信された瞬間から作り手のものではなくなる。
言霊が空間に、宇宙に飛び出し、その言霊に読み手・受取り手が共鳴する。
それが選句という形になる。
選句は優劣で選ぶわけではないですよね。共感できる共鳴するということだと思います。
句会の便宜上、いくつと決めて選句をお願いしていますが、無理な場合もありますね。
今回はそんなことを考えました。ありがとうございます。

では、お待たせいたしました。発表で~~す♪

つづきはこちらからどうぞ
http://mixi.jp/view_event.pl?id=48345611&comm_id=1480782


ただいま、インターネットでの句会運営へ切り替えております。
ソーシャルネットワークシステム mixiサイトにて
毎月開催中です。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1480782
おかげさまで、2009年12月開催で第18回を迎えました。

    
      

     

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